1.TOPページ 1.田舎暮らしガイド 2.田舎移住体験記 3.週末田舎暮らし 4.スローライフのヒント 5.田舎暮らしの就業・起業 6.田舎暮らしの住まい

 4.スローライフのヒント  〜3.生活全般の技術・ノウハウ〜         http://inakalife.net/


『山で暮らす 愉しみと基本の技術』
山村の暮らしに必要な生活技術を文とイラストで紹介した良書

 久々に一気に読み進められた、おすすめの本に出会った。著者は群馬県で古民家を借りて山暮らしを営むイラストレーター&ライターで、作業道づくりや間伐などの森林管理に関する著述もある。本書は、山暮らしの中で、地元の先達に教わったことや実践で得たことなどを通して、山暮らしに必要な実践的技術を、文とイラストを使ってイメージが湧きやすいように紹介したものだ。

 内容は、「序章 山暮らしの技術とは?」の導入から入り、「第1章 木を伐る、草を刈る」では下刈りと伐採に必要な道具とその使い方やメンテナンス、実際の作業方法を解説する。これがありがちな「教科書的記述」を踏み越えた、すぐれて実践的な内容となっている。私自身も素人なりに試行錯誤する中で同じ結論にたどり着いた事柄から、なるほどこの手があったのかと思わせられるような未知の事柄に至るまで、本当に現場で即座に役に立つ技術が満載だ。

 「第2章 石を積み敷地をつくる」は傾斜地を平坦にして土地利用する上で、古来から必須の技術だった石垣の積み方や再生方法を解説している。「第3章 水源と水路」では、飲料水の確保とと浄化法、汚水処理の方法など、人間の生活に必須な給排水の技術を紹介してる。「第4章 小屋をつくる」では、暮らしの維持に欠かせない作業場や車庫・道具小屋などとして利用するための掘立小屋を、山から切り出した間伐丸太材を構造材として自作する方法を解説する。実用的でローコストがウリの建築だ。「第5章 火を使う」では、室内での直火焚きの良さを説き、囲炉裏を中心にその作り方や利用法などを解説している。

 全体的に具体的でわかりやすく、「これをどうやって自分のところで実用化しようか?」などという問いは不要であり、これを見て読めばそのまま実践に移せるすぐれものだ。このような生活技術は、古来より本にして文字で伝達されるような類のものではなく、世代から世代へ実践や口伝を通して継承されてきたものである。しかし、いまやその伝統的な伝達方法は継承者が乏しく、危機に瀕していると言ってよい。それが文字とイラストで記録されたというだけでも値千金の書だと思うし、実践に活用されればなおのこと価値ある本となることは間違いない。

TOP頁リスト頁頁先頭


『楽しいぞ!ひと昔前の暮らしかた』
古民家で昔の暮らしの様々な営みを楽しみながら実践

 青少年向けの岩波ジュニア新書から、古民家での生活体験を子どもたちに紹介する本が出版された。この本は、古民家に移住し、農作業などをしながら家族で暮らしている筆者自身が実体験を綴っている点が特徴的である。

 古民家での暮らしは、自分たちで薪を割って直火を焚き、茅を刈って屋根を葺き替え、毎日ほうきで土間を掃き、定期的に煤払いをするなど、そこに暮らす家族の日常生活の営みの反復によって保たれていく点が特色であることがわかるが、古民家での暮らしはまさに「人家一体」と言えるだろう。また、昔ながらの道具で綿を育てて糸を紡いで機を織る作業や、化学肥料・農薬・大型農機が普及する前の道具と方法で米や麦などをつくり、食品加工もするという生活も紹介されている。

 さらに、この生活実践は、隣近所や道で出会う人、伝統行事への参加で出会った人など、地域の人との交流に支えられている点にも注目したい。また、著者の家族はこの生活を心から楽しんでいることがが随所から伝わってくる。青少年向けの本であるし、欲を言えばもっとたくさんの図版が欲しいところだが、新書という制約もあるのだろう。

 この本で紹介された多くの体験は、子どもにしてみれば極めて新鮮で強烈な知的好奇心をひきおこす貴重なものとなるだろう。子どもたちが徐々に失われゆく伝統的な生活文化にふれる入口ができたことの意義は決して小さくはない。また、岩波のジュニア新書は、青少年向けに平易に編集・執筆されているとはいえ、大人の知的欲求も十分に満たしてくれる。子どもたちの生活体験学習の窓口としてはちろん、大人にも古民家での田舎暮らし体験記として役に立ち、また楽しめる1冊である。

TOP頁リスト頁頁先頭


『今関さんちの自給自足的生活入門』
農的生活で実現できる食品加工の方法などを紹介

 著者は、50歳で脱サラ・就農し、農地を求めて千葉県から徳島県に転居した。ライターとしても活動している。この本は、自給自足的生活のための食物・食品づくりを紹介したものである。

 全体が3章立てになっており、第1章は養鶏・稲作・畑作・山菜採りなどを紹介している。また、自家採種への取り組みもつづられている。第2章は主に大豆・小麦などを主原料とした発酵食品づくりをはじめ、クッキー・ジャム・漬物・こんにゃく・手打ちうどん・梅干し・乾燥イモ・薬草茶など、著者が長年かけて挑戦してきた商品の加工法を紹介している。さらに、第3章は農作業や食品加工に使用している道具・機械類の入手の経緯や使用しての実感を紹介している。

 本書を読んでまず感じたのは、レシピ・マニュアルの紹介本なのに、非常にすらすらとページが進んでいくということである。やはり、どこかで見聞きしたことではなく、自ら実践してきたことを紹介しているということがその秘訣ではないだろうか。また、そのような内容であるだけに、単なるレシピ本・マニュアル本ではなしに、著者の新規就農以来の暮らしの歩みが綴られたストーリー性のある本となっている点も見逃せない。

 農的生活や自前での食品加工に興味のある人にとっては、得るものが大きい本だと思う。

TOP頁リスト頁頁先頭


『木洩れ日の庭で』
住まいや土地・景観などの空間をトータルデザインする必要を考えさせられる本

 著者は、住宅庭園・都市建築・集合住宅・リゾート施設などのランド・スケープ・デザイナーである。自然の中で自然と共に暮らすための庭のあり方を追究していて、自身も八ヶ岳山麓に住まいとアトリエを構えている。この本は、庭を中心テーマに、著者が撮った写真とエッセイで構成されている。写真は一頁分のスペースにゆったりと配されているので、本自体がやや横長の装丁となっている。

 自然豊かなところで暮らそうと思うとき、だれもが土地の利用価値や景観、住居のあり方などを吟味すると思うが、庭はどうだろうか。この本を読んで、土地・景観・住居の接点であり、これらを融合させる役割を果たすのが庭であるということを、改めて考えさせられた。また、庭という空間は、住居と異なって生命体としての草木を素材にするのであるから、なるほど人間と草木との時間の調和が大切になってくる。すなわち、庭づくりとは、空間と共に時間をも設計する広くて奥深い営みということになる。

 この本を読んでいる途中、何やらとりとめもない内容の本だと思ったが、それは庭のもつこのような特性ゆえのことであろう。個々の章節のテーマは実に多方面にわたっているが、なるほどと納得させられるプロとしての識見や、はっとさせられる感性や考え方が表出した文が随所にあった。「家」・「土地」・「景色」だけではなく、暮らしの「空間」をトータルに考えようとする際に一読したい本である。

TOP頁リスト頁頁先頭


『DASH村からワシが伝えたかったこと 三瓶明雄の知恵』
農村で伝承されてきた暮らしの知恵を対話形式でつづる

 日本TV『ザ!鉄腕!DASH!!』の農業指導者をつとめる三瓶氏の農業や生活の経験・知識を対話形式で綴った本である。

 住まいの知恵、田畑での農作物の作り方、味噌造りなどの食事の知恵、炭焼き窯・かまど、縄・草鞋、五右衛門風呂の作り方など、様々な暮らしの知恵を、開拓農民の家庭に生まれ育った三瓶氏が当時を回想しながら解説してくれる。言葉の端々からは、自然や周囲の人に対する謙虚な姿勢が伝わってくる。

 炭焼き窯づくりなどでは、寸法に至るまで詳細に語ってくれて少々閉口するが(図解や解説を別にしてほしいと思った)、全体としては巧みな対話形式で、流れるように話が展開していくので、非常に読みやすく、モノや作業の具体的なイメージが湧きやすかった。

 菜園づくりやスローフードづくりなどに挑戦してみたいと思っている未経験者が読めば、チャレンジ精神がどんどん高まってくるのではないだろうか。


TOP頁リスト頁頁先頭


『エコライフ&スローライフを実現する愉しい非電化』
非電化製品を採り入れ、程ほどに快適で便利な生活をめざす

 この本は、冷蔵庫・洗濯機・除湿器・珈琲焙煎器・ラジオ・パッシブソーラーの冷暖房など、多種多様な非電化製品を紹介している。それらは、著者の発明品をはじめ、昔ながらの機械式のすぐれものや、それに著者の改良を加えたものなどである。また、著者はこのような製品の製造・普及のモデルづくりにも積極的で、その実践的取り組みをモンゴルで展開している。

 著者は電化を否定するものではなく、また貧しい昔の生活に回帰することを提唱しているのではない。電化によって過剰に便利さ・快適さを追求してきたことが、先進国の社会が抱える問題や地球環境問題を深刻化させていると捉えているのである。非電化製品によって「ほどほど」の快適さや便利さを実現すること、非電化製品をつくり、利用する工夫を愉しむことが著者の目指すところである。

 この本を読むと、専門領域の物理学・工学の識見はもちろん、環境問題・南北問題・資源エネルギー問題などの現代的な社会問題への高い関心と、科学技術史・工業史への深い造詣などが伝わってきて、著者が単なる発明の「専門家」(発明屋?)ではなく、科学者として幅広く深い学識をもって製品開発に取り組んでいることがよくわかる。

また、日常生活で何気なく電気を消費・浪費している立場にある読者としては、発電段階から消費までの電力や電化製品を、「エネルギー」や「運動」などの物理的な視点から捉え直すことができて新鮮である。

 製品の原理や構造などの説明は、一般人にも平易に理解できて読みやすい。

TOP頁リスト頁頁先頭


『自然の暮らしがわかる本』
自然とともに暮らしたいという人のために多方面にわたる暮らしのノウハウを満載

 何かを契機に、自然に囲まれて「田舎暮らし」や「スローライフ」を実現してみたいという憧れを抱いた人に、その生活の全体像や個別の取り組みの具体的な実行法を示し、憧れの暮らしのイメージを膨らませてくれそうな本である。

 著者の取材や体験をもとに、快適な住まいの確保、農耕・酪農などの農業、米・麦・雑穀・大豆などの食品加工法、薪・山菜・きのこ・薬草などの里山の恵みの活用、刃物などの道具・機械の手入れ法など、多岐にわたる暮らしのノウハウが解説されている。中には、誰かが意識的に古老から継承し、文字で書き留めていかなくては、消滅しかねないものもある。

 これらは、文章のほかにも、手順や位置などを説明したイラストや写真などを随所で用いて解説されており、丁寧な構成となっている。また、個別のテーマをさらに深く勉強し、実践したいという人のために、さまざまな依頼先や問い合わせ先、「おすすめBOOK」を紹介するなど、後々の発展性にもきちんと配慮した入門書となっている。


TOP頁リスト頁頁先頭


『田園生活の教科書』
自然豊かな場で生きていくということの喜びと厳しさがともに伝わってくる一冊

 著者は、北米で狩猟・魚釣りなどで暮らした経験を持ち、東京から北海道の十勝地方に移住して「田園生活」を営んでいる。その経歴に裏付けられ、本書は「田園生活」のリスク管理と道具の利用に重点を置く個性的な内容となっている。

 まず、居住地選びや住居・生業の確保、生活の知恵など、田舎移住に関するアドバイスは序章にまとめられている。その内容は参考になる点が多い。

 本編第1章では、自然とのふれ合い、菜園づくりや造園、魚釣りに狩猟と、「田園生活」の醍醐味がたっぷりと紹介されている。第2章ではさまざまな作業に伴う服装や装備、ボルト・ナットなどの部品から、草刈機・チェーンソーなどの工具や機械の扱い方、刃物の研磨などのメンテナンス法を説明している。さらに第3章では、車や機械・工具の選び方・買い方、ひもの結び方、除雪や火災・盗難予防などの生活安全対策が解説されている。また、スズメバチ・ダニ・寄生虫・ヒグマなどの害獣・害虫対策も説明されており、大いに勉強になる。

 個々人の生活スタイルに照らすと不要な説明もあろうが、そこは取捨選択しながら読み進めたい。この本を読めば、「田園生活」には必ずしものどかで安全快適なものではないことに気付かされるだろう。「備えあれば憂いなし」のことわざを想起させる本で、一読の価値がある。特に北海道への田舎移住を考える人には、強くおすすめしたい。

TOP頁リスト頁頁先頭


『完全版 自給自足の本』
家屋も含めた自分が住まう「場」のグランドデザインと住まい方の参考になる本

 この本は、北海道仁木町でアリス・ファームを主宰する二人の『The Complete Book of Self-Sufficiency』(1976年、London)の訳本である。開墾から始まる農耕と牧畜のやり方、その品種紹介や生産物の加工法と保存法、自然エネルギーの利用法、手仕事によるさまざまな材料の加工法などが盛りだくさんの大判でボリュームのある(高さ28cm・全158頁)の本である。各ページには大きな挿絵があって内容が理解しやすい。

 余談だが、原書の改訂新版『The NEW complete book of SELF-SUFFICIENCY』(2003年、London)をアマゾンで買ってみたが、頁数はほぼ2倍だった。挿絵がオールカラーでとてもよかった。

 この本の内容は詳細かつ多岐にわたっており、大いに勉強になった。反面、最初から最後まで通読するにはかなりの根気がいる。関心のある項目からアトランダムに読み進めていくのも一法だと思う。

 この本の日本版、すなわち日本の伝統的な生産・生活技術や知恵を解説した本がほしくなってくる。

TOP頁リスト頁頁先頭