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 4.スローライフのヒント 〜2.スローフード/ハンドメイド〜          http://inakalife.net/


『ひと手間の幸せを感じたい 田舎暮らしに憧れて』
家庭菜園づくりや手作り食品などの加工の実践やその方法を紹介した本

 小さな2人の娘のいる4人家族の、家庭菜園(不耕起栽培)・食物や繊維品の手作りを中心とした田舎暮らしでの実践を紹介した本である。その実践者は、神奈川県北端の藤野町に移住したフリーイラストレーター夫婦の妻であるが、夫の撮影による写真が使われている。カラー写真が豊富で説明も丁寧であり、読者がレシピを見ながら挑戦してみることができるように編集されている。紹介されている内容は、食品が中心でその貯蔵法がとても参考になると思う。

 具体的にとりあげられているのは、味噌・梅干し・天然酵母(りんご・ぶどう)・パン・リンゴのコンフィチュール、藍染め・干し大根・干しりんご・草木染め・蜜蝋ロウソク・蔓のかご編み・布織りである。これらが、菜園や自然環境の春夏秋冬の変化を紹介しながら、鮮やかな手法で季節を追いつつ編集されている。山野草を利用した料理、手作りおやつ、野遊び、畑作業、自宅にある伝統的な道具類の紹介なども、要所要所に組み込まれている。

 大判の本だが全82ページであり、読みやすいので数時間もあれば通読できる。食品加工などの手作りに興味のある人にはおすすめの1冊である。ただ、奥付の書誌であるが、「廣島愛子」さんのプロフィールなどが紹介されているものの、著者であることが明示されていない。ちなみに「編集人 染谷幸子」と記されている。著者を誰が見てもはっきりとわかるように明示するのが出版物の基本ではないかと思うが、いかがなものか。

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『東京発スローライフ』
八王子郊外に暮らすネイチャークラフト作家のハンドメイドを中心とした生活の紹介

 東京都の八王子市郊外の民家を借りて妻とアトリエを構えて生活している、北海道生まれのネイチャークラフト作家の本である。『オレンジページ インテリア』に連載した「東京発ハンドメイドスローライフ」を一書にまとめたものだ。最初は、書名を見て都心部でスローライフを貫き通している人がそのライフスタイルを発信しているのかと思ったが、この本のテーマは「ハンドメイド」にあるようだ。

 ネイチャークラフトといえば、その準備段階として自然素材の収集をしなくてはならないが、実家の家業が山菜料理店で、幼少のころから山菜採りをしていたという原体験が生きている生活である点が興味深かった。全90ページあまりの薄い本で、ページをめくると、四季折々の素材集めや作品製作、山菜などの採集による食生活や自然の中での遊び、知人・友人の助力を得たアトリエづくりなど、活動的な日常生活が豊富な写真と読みやすい文で紹介されている。クラフトの素材も、つる、草、竹、木の枝、流木、貝殻、ビーチグラスと多様で、その収集の仕方から、かご、ハンガー、ラック、フック、リース、ランプやちょっとしたオブジェなどの作品や作り方が丁寧に説明されている。

 つる、竹、草などは、往々にして雑木林や庭・畑の「厄介者」として扱われがちなところだが、これをクラフトの素材として視点をかえて見てみると、「自然のモノ」に違った価値を見出せるという点が新鮮であった。このことは、逆に言えば、こんなモノからでも、日常生活にとけ込んだ、さりげなくおしゃれだったり、かわいかったりする作品が生まれるんだということの再発見であり、ちょっとしたアイデア・工夫や、自分でひと手間かけるハンドメイドのよさ、すばらしさを実感できた一冊であった。

 また、最後に「東京の田舎に暮らすということ」と題して綴られている、現在の場所に居を構えるまでの経緯と新生活を立ち上げて間もないころのさまざまな体験は、田舎暮らし・スローライフに関心を抱く人にとって大いに参考になると思う。

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『生きている日本のスローフード 宮崎県椎葉村、究極の郷土食』
日本の基層文化にまでさかのぼる郷土食の奥深さを実感

 この本は、『田舎暮らしの本』(宝島社、2003年8月〜05年2月)に連載した記事をまとめたものである。全293頁のハードカバーできれいなカラー写真がふんだんに盛り込まれていてボリュームたっぷりに仕上がっている。

 熊本との県境にある宮崎県椎葉村という山村に今でも伝わる農耕・狩猟・漁撈の数々やその収穫物を用いた加工食品や料理が紹介されている。豆腐の中に刻んで茹でた山菜・野菜を入れた菜豆腐、蒸し茶ではなく大釜で炒ってつくる釜炒り茶、石灰岩層を通った谷川でとれるノリ、干タケノコなどが入った煮しめ、カシの実コンニャク、ヤマユリ(ウバユリ)でつくるデンプン粉、ヒガンバナの近種で有毒のオオシ(キツネノカミソリ)からつくるデンプン粉、ヤマノイモ科に属するヒメ(カシュウイモ)・高い山の絶壁に群生する地衣類のイワタケ、そば粉を用いた具を入れるダゴ汁、麦・小豆・米を竹皮に包んで煮込む麦包み、ヒエ・アワ・トウキビ・小豆などを加えて蒸したウムシ飯など、珍しい食材や加工法を用いた料理が次々に出てくる。

 また、雑穀をはじめとする農作物をもたらす焼畑農耕、アク抜きの技法、エノハ(ヤマメ)・ウナギなどの釣り、シシの狩猟法なども詳しく紹介されている。

 日本列島に稲作農耕が伝来する以前にさかのぼるとされている山村の食文化の営みが未だに継承されていることには驚きを禁じ得ない。このような奥深い食文化は、21世紀にも継承されていって欲しいと願わずにはいられない。


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『ぽれぽれ田舎暮らしはおいしい楽しい』
季節ごとに入手できる自然素材を料理はじめ生活に役立てる方法を紹介

 山梨県に移住し、古民家に暮らす主婦が、ふるさと情報館発行の『月刊ふるさとネットワーク』に連載した記事をもとに、旬の自然素材を用いた料理や工芸品のレシピをまとめた本。タイトルにある「ぽれぽれ」ととは、スワヒリ語で「のんびり」という意味だそうだ。

 本書の体裁は、横書きで見開きの左端・右端に注釈のスペースをとっているが、これによって本のサイズがいたずらに一回り大きくなり、扱いにくかったように思う。必要不可欠な注釈は、脚注形式にした方がむしろ読みやすいと思った。ただし、カラー頁の写真やイラストの持つ雰囲気は、テーマの内容やイメージにぴったりだと思う。

 レシピは、さまざまな草木の果実・花・葉や蜂蜜などの季節の恵みの利用法、ピッツァ・バウムクーヘンの焼き方や鶏のしめ方、穀類・大豆・麹などを用いたビール・蕎麦・ほうとう・豆腐・味噌・醤油・餅づくり、果ては石鹸・草履・竹細工・つる細工・紙すき・綿糸づくりの方法など、衣食の多方面にわたっている。また、レシピの間に挿入されているスローライフの楽しみを紹介した短いエッセイも味わいある内容だ。

 生活に必要なものを家庭で楽しみながら作ることは、それ自体意義深いと思う。本書は、さまざまな手作り製法に初挑戦する人のよき入門書となるであろう。また、メーカーの機械製造品を消費するのが常識の世の中で、本書のように各地で伝承されてきた手作り製法を記録しておくことも、数十年後には重要な意味を帯びてくるのではないだろうか。

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『食の堕落を救え!』
時代を生き抜く発酵食品の奥深さとそれを守る職人の心意気

 東京農業大学教授の著者が、発酵・醸造食品の分野でより高い完成度を追究して不断の努力を続ける職人12人を、豊富な知見に基づいて選び出し、「食の人間国宝」として紹介している。その食品は、醤油・みりん・漬け物・鰹節・納豆・味噌・酒・鮒鮓・塩辛・泡盛・ふぐの卵巣の糠漬け・チーズの12品目である。

 戦後日本の社会や自然環境などの大きな変化は、人間の生活環境だけではなく、伝統的な食品の製造環境をも大きく変化させていたことに改めて気付かされた。このような食品の最適な原料を確保し、昔ながらの製法で作り上げることは、年々難しくなっているという。経営を存続させながら、手間暇惜しまず、熟練の技術と感覚を駆使して最高のものを作ろうとする職人の心意気は、本当にすばらしく思えた。

 1章ずつ読み進めるたびに、自分が日常何気なく買って食べている食品はどのように作られてているのだろうという関心が、ふつふつとわき上がってきた。


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『本物を伝える 日本のスローフード』
伝統野菜の生産や地産地消、食育の取り組みなどを広く紹介

 地元の伝統野菜づくりや地元食材使用のレストラン、地域の食文化を子どもたちに伝える学校給食など、日本各地のさまざまな「スローフード」を守る取り組みが紹介されている。

 また、塩・醤油・麩・茶・漬物・酒・みりん・鰹節・菜種油・納豆など、伝統の技法を守りながらつくられている、日本各地の「本物」の食品も紹介されている。

 安全でおいしい「本物」の食品そのものもすばらしいが、それを消費者に提供し、また未来に伝えていこうとする人たちの熱意と努力もまたすばらしいと思った。

 「本物」の食品の未来には、供給する側の努力はもちろんだが、その価値に対する消費者側の理解の高まりも不可欠であると感じた。

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『週末スローフード生活』(小学館文庫)
実践者の考え方に触れ、家庭料理にも活用できる書き下ろし文庫本

 編集者が妙に抽象的な団体名だったので、正直なところ眉唾ものかと思って警戒したが、うれしい誤算であった。この本には和食・イタリアン・中華・フレンチの4人のシェフが写真入りで登場し、「食」について大切にしていることなどを紹介して、各自がそのコンセプトに基づいて生み出したオリジナルレシピをカラー写真入りで計33例にわたって紹介している。

 レシピと共に、シェフたちの「食」への思いも味わい深かった。いわく、家庭の味を大切にすること、手間暇を惜しまず作って食べること、旬の味を大切にすること、家族(特に子ども)と一緒に作って食べることなど、ともすれば効率と採算が大手を振っている現代社会の中ではすたれつつある食生活の「基本」を再認識することができた。

 また後半は、子どもとのピザ作り、生パスタ作りやバケツでの米作り、味噌や塩の作り方など、家庭でもできる食材の作り方がわかりやすく紹介されてる。他にも、貸農園・農業体験に関するサイトの情報や、会員制の野菜直販組織の代表へのインタビューの内容と産直ネット販売サイトの紹介、また東京農大教授で日本スローフード協会会長の声も紹介されている。

 本書は文庫本であるが、内容は書き下ろしであり、また価格も手頃で、スローフード関係に興味のある人にとっては、気軽に購入して「食材」や「食育」関連の考え方に触れ、また家庭での実践にも活用できる本だと思う。

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