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 6.田舎暮らしの住まい (2007〜) http://inakalife.net/  


『別荘建設のノウハウ集
別荘建設の目的、自然条件に応じた土地選びや建て方、別荘特有の維持管理のポイントを解説

 著者は、電気工学を修めて通信系の大企業の研究所に勤務していた経歴の持ち主で、1992年末に58歳で長野県の標高1,200mの村営別荘地に別荘を建てて利用している。この本は、そこでの約16年間にわたる通いの別荘生活で得た経験を中心に、別荘の建て方とメンテナンス等のノウハウをまとめたものである。

 特に、平地の都市部では必要のない、高地・寒冷地という自然条件の厳しい場所特有の別荘の建て方や維持管理のポイントがまとめられており、山別荘にあこがれている人、具体的な計画を立てようと考えている人にとって、役立つ知識が豊富である。

 「1.別荘って何」では、自然の中にある別荘の人それぞれの楽しみ方、ホテルや旅館と比較した別荘を持つことの醍醐味、さまざまな活用の仕方を紹介する。「2.地域の選択」では、利用目的、気温・湿度・日照・積雪量などの気候条件、移動の所要時間と費用など観点から、地域選びの留意点を解説する。

 「3.地形・環境の選択」では、周辺の土地利用状況、景観と樹木やアプローチなどを中心とした敷地と隣地の兼ね合い、必要面積や土地勾配の利用、建物の向きの問題や水が絡む水脈・井戸・温泉の注意点などを、また「4.環境、サービスの確認」では、維持管理や生活関連施設、ライフラインなどとりあげる。

 また、「5.車の装備と雪道運転」と「6.駐車場」では、別荘生活の移動・運搬に必須の安全で快適な車選びと、その装備や運転の注意、建物と駐車場の望ましい位置関係などを解説する。

 また、メインの「7.建物」は、基本的な形や間取り、土留めや基礎、風呂やキッチンなどの水周り、内壁や窓・戸などの内装や収納、外壁や玄関周りにベランダ、屋根や庇、トイレと排水処理、石油タンク・LPGガス・汲み取り口・外水栓の留意点など、建物づくり全般の留意点を解説する。次いで、「8.凍結対策」、「9.雪対策」、「10.雨、湿気対策」は、厳しい自然条件から建物を守るためのノウハウを紹介する。

 「11.暖房」、「12.空調(冷房)」、「13.洗濯」は生活のあり方と絡めた設備関係の解説である。また、「14.庭の景観」は、快適な生活のための敷地管理のコツ、「15..家具」は室内を広く快適に使うための工夫等、「16.アウトドア」は、屋外での生活を快適に過ごすための設備や道具の解説である。

 さらに、「17.台所用具」は、必要な、あるいは便利な設備や道具などの解説、「18.照明、コンセント」は、目的に応じて電気製品を快適に使う工夫、「19.道具、工具、部品など」は、土木作業や木工など別荘生活の維持管理に必要なツールの紹介である。「20.その他」は、ペットの管理、害虫・害獣対策、文具や薬品、通信など、生活関連の雑多な小道具等の解説である。

 全体を見て、後半の並びが雑多な印象を受ける。また、何よりも素人の初心者相手に文章での説明に終始し、図や写真が皆無である点が、ノウハウ集としてはいかがなものかと思う。しかし、寒冷地で傾斜地を手に入れ、小さな建物を建築中の評者の立場からすれば、別荘やセカンドハウスを建てたい人、手に入れたい人が、具体的なプランを思い描くに先立って一読しておくと、実際に役に立つ内容が少なくない本だと思う。

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『木造住宅私家版仕様書 コンプリート版 究極の木組の家づくり図鑑 
古民家などに見る「伝統構法」の長所を活かした実践的な解説本

 この本は、月刊『建築知識』の連載記事(1995.2〜97.2)を、一書にまとめた1998年刊行の「架構編」がベースになっている。これに、『建築知識』1999年6月号の特集「仕上げ編」を補足し、同誌に2001年7月から連載した「現場編」の構造的検証や提案も加えられている。

 本書は、このような経緯を経てまとめあげられた、「木組の家」づくりの実践的・実務的な「完全版 架構編+仕上げ編」である。多項目にわたるコンセプトは割愛するが、日本の気候風土に合致しながら長い時間を生きてきた古民家を見直し、「伝統構法」をいまに活かした開放的で耐震性の高い長寿命の家づくりの実践的な仕様書を目指している。

 読者サイドで留意しておきたいのは、本書にいう「伝統構法」とは、柱・梁などで構成される「軸組工法」ではあるが、一般に言われる「在来工法」とは若干異なる点である。いわる「在来工法」は近代以降に西欧から採り入れたトラス構造を使った「剛」の家づくりの発想であるのに対し、「伝統構法」はそれ以前から存在した木の粘り強い特性を活かした「柔」構造の家づくりである。

 したがって、例えば耐力壁で見てみると、筋違による耐力壁の解説もきちんと加えつつ、地震に対してめり込み抵抗力を発揮して倒壊を防ぐ貫(ぬき)を使った耐力壁の施工が詳細に解説されている。また、床組を厚板で剛構造に固める施工法などが詳細に解説されている点も、本書の大きな特徴と言えると思う。

 全体を通しては、木の特性に始まり、地盤・基礎も含めた設計・施工法や現場監理のポイント、屋根・内外壁・床面などの仕上げの方法など、家づくりに必要な事柄が網羅的に解説されている。また、終章には、さまざまな特徴を持つ「木組の家」が6例紹介されている。

 このような「伝統構法」の要素を採り入れたいというセルフ・ビルダーにとって、本書は大いに参考になるものと思う。なお、この出版社の技術系の解説本は、他ジャンルのものも読んだことがあるが、構成などがわかりやすく、また解説文の理解しやすい。技術系の解説本について、編集のクオリティがしっかり保たれており、このごろちょっと注目の出版社である。

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『建築知識』2007年10月号No.627 特集 木造現場入門 [写真帖+DVDビデオ] 
現在の一般的な在来工法の現場作業がよくわかる一冊

 当サイトは、ムック等も含めて専ら「図書」を紹介しているが、本書は「雑誌」でありながらも、あえて例外的にとりあげることにした。この雑誌では、DVDビデオ付きで木造現場入門という特集が組まれており、特に設計を学ぶ者を対象に、設計実務に役立つ現場施工の知識を紹介している。

 その内容構成は、「地業・基礎」、「プレカット工場」、「建方」、「屋根」、「外壁仕上げ」、「外部開口部」、「断熱」、「内部床」、「内部壁」、「内部天井」、「階段」、「建具・建具枠」、「電気・空調・給排水設備」、「デッキ・バルコニー」となっている。それぞれの項目について、豊富なイラストや写真を用いて解説がなされていて、とてもわかりやすい。

 また、付録のDVDビデオも、飽きることなく一気に観ることができる。内容は、「オープニング」、「基礎・土台敷き」、「プレカット工場」、「建方」、「木材の特性」、「屋根」、「外壁」、「設備・シロアリ」、「エンディング」となっている。特集記事を読むか、DVDビデオを観るかということではなく、両者は同テーマで別内容と言ってよく、「読む」と「観る」の両方が必要だ。

 今時の木造軸組工法による家づくりが非常によくわかる内容になっており、設計を学ぶ者だけではなく、これから注文住宅を建てる人やセルフビルドに挑む人にも、必ずや参考になるであろう保存版の1冊である。


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『セルフビルド 家をつくる自由』
いずれも個性派揃いのセルフビルド事例集

 この本は、セルフビルドによってつくられた(あるいはつくられつつある)家とその家づくり、家主兼建築者を多数取材して一書にまとめた本である。建築例を、「第1章 セルフビルドの極みへ」(8例)・「第2章 自由自在のセルフビルド」(7例)・「第3章 セルフビルドは脱建築へ」(8例)・「第4章 ハーフビルドという選択」(7例)の4つのカテゴリに区分してレポートしている。また、その要所要所にセルフビルダーである陶芸家と建築家の著者による、家づくりのために役立つ、土地さがし、資材調達、製作技術、樹種、予算、法律などをテーマとしたコラムが配されている。

 また、最後に編著者が取材して受けたセルフビルドの住宅から受けたインパクトやセルフビルドやその進め方などの類型化などの内容を、鼎談形式でまとめている。なかなか妙味のあるしめ方だ。そして、巻末には本文に出てくる建築用語や建築道具の開設がついている。一軒一軒の事例について、建築主の思い・努力・創意工夫、外装・内装や外構工事の造りや工程などが手際よく紹介されている。

 個々の事例は、概観や内観が見開きのカラー写真ページで紹介されていて、家の雰囲気や造りの個性がよく伝わってくる。写真のコメントなどに校正漏れが若干目立つものの、モノクロのページにも写真や図がふんだんに用いられていて、具体像がつかみやすい。

 セルフビルドといえば「コストダウン」というのが定番の考え方だが、この本で取り上げれている実例は、どれも、自分でできることは自分でやる、自分の希望は自分で実現するというコンセプトに支えられた個性派揃いの家だ。趣味や志向などの家に対する自分の思い入れや夢がつまっている事例ばかりだ。中には家づくりがライフワーク、趣味の域になっている例も多く、建築アートの域に達しているような家も紹介されている。

 とにかく、「やろうと思えば、自分でやっても、ここまでできるんだ」という勇気と意欲を与えてくれる1冊である。セルフビルドに少しでも興味関心を抱いている人に、またセルフビルドを決めた人、作業にかかり始めた人にも、広く一読をすすめたい。

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