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 5.田舎暮らしの就業・起業  (2005〜)                       http://inakalife.net/

『週2日だけ働いて 農業で1000万円稼ぐ法』
北海道に転勤して農業後継者となった兼業農家の畑作経営

 著者は、北海道出身で東京に転勤して起業セミナーの仕事をし、株式投資もやっていたが、父の病を気に郷里に転勤した、会社員兼農業後継者である。この本は、北海道で長ネギ栽培を中心とした畑作を行っている著者が、東京時代に得たビジネス経験や考え方を活用している点が興味深い。

 「序章 株で2000万円損した私が、農業で成功できたわけ」は、東京時代のビジネス等の経験談に始まり、どのような遍歴を経て農業経営をするに至ったかを綴った自己プロフィール的な章である。

 「第1章 素人でも農業参入は簡単にできる」は、新規就農のための体験的アドバイスで、農地の調達、初期の資本金、農業の学び方や作物の選定、兼業農家としての働き方などを述べている。素人でも簡単なようなことが書かれているが、その地域や土地にも、また農業にも縁のないところで育った新規就農希望者ならば、真に受けてはならないように思う。著者は農家育ちで、父母と同居して家業を分担、経営方針を議論しながら営農している。その後継者だけが享受できるメリットが、さほど自己認識されていないように思えた。

 「第2章 なぜ1000万円超の収入になったのか」では、2〜3年目からの規模拡大、設備投資、リスク・ヘッジなどの実践を通して得たアドバイス述べる。とにかくリスクの分散に対する考慮もなく、作付面積の急拡大や借り入れによる身の丈以上の設備投資をすることなどは危険なようだ。

 また、「第3章 一目でわかる! 1年間の農業の流れ」では、年間の作付作物ごとの作業暦を紹介し、「第4章 誰も教えてくれない農業の裏技」では、働き方や農業機械などの経費節減のノウハウのほか、就農後の実体験で得たさまざまな事柄を紹介している。

 「第5章 農業は週2日の管理でできる」は、兼業農家としての人件費や作業内容の割り振りなど、自分や家族、パートなどの労働管理の要諦を紹介する。また、終章の「第6章 農業に参入してよい地域、悪い地域」では、土壌・地形など自然条件や農協などの産業インフラの条件を述べる。

 全体を通じ、作物の作り方や独自の販路開拓などにこだわった専業の新規就農者の体験的アドバイスではなく、兼業農家で農協が出荷先という、至って「常識」的な農家が最大限の利益確保を目指して創意工夫や試行錯誤している様子がよくわかった。ただ、北海道の農業は、日本全体からみて独特である。この本の内容の普遍性がどこまで及ぶかは、力量不足で判断し難いところだ。

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『里山ビジネス』
長野の里山に開いたワイナリー経営を紹介、自然調和型・持続型ビジネスの本質を説く

 著者は、最近『田舎暮らしができる人 できない人』を上梓した長野在住の文筆家・画家。フランスへの留学経験を持ち、その関連のエッセイ等も執筆。農園主にしてワイナリー・オーナーである。

 この本は、全5章立てで、第1章は「素人商売事始め」と題したワイナリー起業のエッセイ。人気もまばらな田舎で、初期設備投資の大きいワイナリーを開業し、採算性を向上させるためのさまざまな取り組みを試みていく話題。第2章は「ワイナリーを起業する」として、ワイナリー経営を主にビジネスとしての視点に立って紹介する。ここまでは、具象的・即物的な内容だ。

 第3章「里山のビジネスモデル」は、里山ビジネスの真髄を述べた章と言えよう。その場の風景やその場での農作業などの生業や生活の営み、その場でしか手に入らないものなど、そこに行かないと見ること、得ることができないオリジナリティあふれるものをふんだんに採り入れ、それを遠方から来る客に提供することの価値と効果を説いている。つまり、その「場」から切り離せないもの、切り離したら価値が消滅するものこそが里山ビジネスの何よりの商材と言えそうだ。

 また、第4章は「拡大しないで持続する」として、里山ビジネスの要諦そのものズバリをタイトルとし、古今東西、あるいは著者自らの実体験に基づく、自然と共にある暮らしから会得したことのエッセンスを紹介する。 第5章は「グローバル化は怖くない」として、グローバル化を地域社会・地域経済を破壊する脅威として対置する見方を取らず、むしろ地球全体や国家全体の大きな潮流を著者はまず受け容れている。しかし、それからは超越したスタンスに立ち、自らの暮らしの場、仕事の場にしっかりと足腰を据えていくことの必要を説く。

 さらに、この章では、著者の提示するふたつの労働観、すなわち同じ仕事に就いても事業家を目指すか、職人の道を探求するかという点、換言すれば「拡大」を指向するのか、「持続」を指向するのかという点が鮮やかに浮かび上がっているのが興味深い。要するに、里山ビジネスとは、自ら選びとった場での、その人間が目指す生き方そのもの通ずるということが伝わってくる本である。

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『図解 山を育てる道づくり』
低コストで耐久性のある「四万十式作業道」づくりのノウハウと他地域での実践を紹介

 この本は、高知県四万十町の監修者が確立した日本の気候や山林の条件に合致した「四万十式」の作業道づくりを、イラストレーター・ライターの著者が一書にまとめたものである。

 「四万十式作業道」の“売り”は低コストと高耐久性、および環境調和型である点だが、それを実現しているのが、“半切”、“半盛”、“残土なし”の道づくりである。切土によって剥がされた表土を盛土する路肩に交互に重ねて転圧し、さらに支障木の根株も根の山側と谷側を反転させて路肩の土留に活用する。この表土と根株の活用が施工後の崩れやすい路肩の緑化を短期間で実現することにつながっており、丈夫な道づくりの重要なポイントとなっている。

 このほか、豪雨時の流水谷沢水対策、路肩補強のために必要最小限に使用する丸太アンカー工法、ルート選定の実務、必要な道具・機械・人員とその細かな作業法の解説、費用と手続きなどを、豊富なイラストや写真を効果的に活用し、わかりやすい文で紹介している。また、この方法を日本の各地で実践した事例も6例ほど紹介されている。

 林業のためだけではなしに、山林を生活の場にしている人、しようとしている人が低コストで環境調和型の土地造成をするのにも応用の利く施工方法だと思う。自分で挑戦しても、何となくできるような気がしてくるほどに細かい点まで解説の行き届いた良書である。

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『写真図解 作業道づくり』
低コストの作業道づくりのノウハウを余すところなく紹介

 この本は、近畿地方の林業実践者の共著による作業道づくりのノウハウを写真・図と解説文で詳細に解説したものである。林産品の採算性が大きく後退する中で、如何に低コストで安全かつ耐久性のある林道をつくるかということに林業の将来性が掛かっているという、日本の林業の現在と将来を見据えた作業道づくりの解説本であることが本書の特徴だ。

 林業全体に対する明確なビジョンに裏付けられた内容で、それが単なる矮小な作業道づくりのノウハウ本ではない奥深さを醸し出している。かといって、その一方でいたずらに“うんちく”を垂れる訳ではなく、その説くところは、平易かつ明快であり、評者のような非林業関係者でもかなりしっかりと理解できる内容となっている。

 この本の説く作業道づくりが目指す具体的な目的も明確で、林内で調達できるものを最大限に活用し、2トントラックで容易に集材できる高密度な路網づくりをバックホーによって造成するという点にある。これが長年の経験に裏付けられた実践的技法であることがポイントで、成功体験はもちろん失敗の事例も踏まえているだけに読む者を納得させずにはおかない内容となっている。

 林業関係者、林業に興味のある人のみならず、広い森林を入手して、そこに自らの手でライフステージを築き上げたいと考える人にも、大いに参考になるであろう本であると言えよう。特に、計画・施工ともに安全性・耐久性を確保するために踏まえなくてはならない“禁じ手”が参考になると思う。太古から営まれてきた“道づくり”の基本までもが透けて見えてくる内容の良書である。

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『森林からのニッポン再生』
人工林・山村のいまと、戦前の山林と林業経営のあり方から将来の方向性を提示

 森林を中心に据えた山村の再生の道を探った森林ジャーナリストによる本。全体を通じて「人工林」の歴史的変遷とその役割や価値、戦後の燃料革命以前や戦後復興で木材需要が高まった以前の「人工林」を中心とした林業経営のあり方を参考に、これからの山村での生活や林業経営のあり方などの手がかりを示す。

 この本のキーワードとなる「人工林」を捉える視点は、戦後の高度成長に伴う拡大造林期や、その後の放置林・荒廃林が増加した時期の林業のあり方をはじめ、農業、生活への利用のあり方も含めた、現代人の持つ森林へのイメージ、すなわちこれまでの「常識」が、直近の実態とはそぐわなくなって来ていることを多々指摘している。

 外材の輸入事情も直近では随分と変化してきているようであるし、外材にコスト的に圧倒されて市場競争力が弱いということは常識化しているが、それに加えて国産材は、川下への供給体制が納期・数量・規格・乾燥など量・質ともに低レベルにあるという大きな問題点も指摘している。

 戦後の拡大造林期に全国各地に植林された針葉樹が、いま主伐期を迎えているということを、最近耳にすることが多くなったが、戦後復興から高度経済成長期の需要増による高値の取引の再来を望んでも仕方ないだろう。その時は、売手ペースで生木だろうが、規格が不均一だろうがバンバン売れたのだろう。そのような「山師」的な経営感覚で林業を見たら、先行きに展望が開けないのは当然だろう。

 著者による、森林が供給する資源を現在の需要に照らして多角的に製品化していく必要があるとの指摘は有用に思えた。燃料革命で薪炭材の需要が激減したのと同様に、ブラスチックなどの石油化学製品の普及で、様々な林産品の需要も激減したが、昔は主伐で得られた木材を売らなくても様々な林産品で収入が上がったという。これからの林業を持続していく道があるとしたら、山林から得られる原材料をもとに多角化や差別化を推進していくことだということになるだろうか。

 思うに、木を収穫する林業とは別に、森林の「場」そのものの有用性に着目した体験型のサービスを提供していく道も模索されるべきだろう。そのようなことを考えていく上でも、また一般的な教養として一昔前の「常識」ではない林業・森林のいまを知る上で、好適な1冊だと思う。

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『農!黄金のスモールビジネス』
農業経営にオリジナリティあふれるビジネスモデルを提示

 著者は、通信機メーカーの研究開発12年、半導体メーカーの営業12年を経て、外資系企業の営業統轄本部長を経て「脱サラ」。宮崎県で新規就農してぶどう園を中心とする専業農家になった人物である。本書は、『農で起業する!』の続編にあたり、自らの営農実践をもとに労働時間の管理や価格設定、顧客管理などの「スギヤマ式農業経営」の発想と具体的方法を紹介している。JAなどを利用した(JAに利用された?)農業経営とのコントラストが非常に鮮明で、その戦略・戦術の説明も明快であり、就農希望の有無を問わず、興味深く一気に読み進められる本である。

 ただし、それだけに、新規就農を目指す人がこれを読んだだけでその気になったら「危ない」本であると思う。うたい文句の「週休4日、時給3000円」であるが、誰もがこれを真に受けてはなるまい。これは著者の「サラリーマン時代は、左手にコンピューター、右手に経営書を常に携えた経験」と、就農後の弛まざる研究・実践の試行錯誤の賜物なのであって、農園のブドウが高付加価値商品なのではなく、農園のオーナーが高付加価値の研究開発・経営手腕の持ち主であるが故のことだと思う。単純な農作業の時給が3000円ならば別であるが、これだけのスキルを身につけた人の時給が3000円というのは、全く驚くに値しない。

 それはともかく、オリジナリティあふれる楽しい内容の本であり、一読を勧めたい。

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『農のあるまちでスローライフ!第2集』
自治体や農業関係団体などに向けて都市農業の可能性を提示

 この本はA4サイズだが、50頁弱の薄い冊子で一気に読める。都市住民と共生してまちづくりの一翼を担っている都市農業の従事者やその協力団体などの取り組みが紹介されている。

 都市部の土地を農地にしておいてよいのかという声や重い相続税を心配しながらも、農家として都市農業を堅持し、市民や消費者のニーズにも応えていくという、都市農業の可能性・方向性が示されている。具体的には、農業を市民の生きがいや市民生活の充実に役立てていこうとする市民農業講座・農業体験農園・農産物直売所・荒廃農地を復元する市民ボランティアの活動や京野菜などの郷土料理の食材を守る取り組みなどの実践例がその内容である。

 その所在地である都市やその近辺に住まいする「農」と関わりを持ちたい人などへのガイドブックとしては有用であろうが、どちらかといえば地方自治体などの行政機関や農業関係機関・団体へのまちづくりや農地活用の参考に供することに主眼がおかれた本と言えるだろう。都市農業の現状の一端をうかがい知ることのできる一冊である。

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『生きている日本のスローフード 宮崎県椎葉村、究極の郷土食』
日本の基層文化にまでさかのぼる郷土食の奥深さを実感

 この本は、『田舎暮らしの本』(宝島社、2003年8月〜05年2月)に連載した記事をまとめたものである。全293頁のハードカバーできれいなカラー写真がふんだんに盛り込まれていてボリュームたっぷりに仕上がっている。

 熊本との県境にある宮崎県椎葉村という山村に今でも伝わる農耕・狩猟・漁撈の数々やその収穫物を用いた加工食品や料理が紹介されている。豆腐の中に刻んで茹でた山菜・野菜を入れた菜豆腐、蒸し茶ではなく大釜で炒ってつくる釜炒り茶、石灰岩層を通った谷川でとれるノリ、干タケノコなどが入った煮しめ、カシの実コンニャク、ヤマユリ(ウバユリ)でつくるデンプン粉、ヒガンバナの近種で有毒のオオシ(キツネノカミソリ)からつくるデンプン粉、ヤマノイモ科に属するヒメ(カシュウイモ)・高い山の絶壁に群生する地衣類のイワタケ、そば粉を用いた具を入れるダゴ汁、麦・小豆・米を竹皮に包んで煮込む麦包み、ヒエ・アワ・トウキビ・小豆などを加えて蒸したウムシ飯など、珍しい食材や加工法を用いた料理が次々に出てくる。

 また、雑穀をはじめとする農作物をもたらす焼畑農耕、アク抜きの技法、エノハ(ヤマメ)・ウナギなどの釣り、シシの狩猟法なども詳しく紹介されている。

 日本列島に稲作農耕が伝来する以前にさかのぼるとされている山村の食文化の営みが未だに継承されていることには驚きを禁じ得ない。このような奥深い食文化は、21世紀にも継承されていって欲しいと願わずにはいられない。


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『山で働く人の本 見る・読む林業の仕事』
林業のしくみと仕事、山村での暮らしなどをIターン経験者の実体験を通して紹介

 この本は、社団法人)日本林業改良普及協会が編集した本で、林業の現場の森林組合や林業会社やそこに就労した人に幅広く取材した本で、一般には馴染みの薄い林業で働くということ、山村に暮らすということの実際がどういうものなのかを、さまざまな立場にある人20人あまりの実例を通じて紹介するかたちでまとめた分かりやすい本である。カラーページも豊富でイメージがつかみやすいのが特徴になっている。

 内容の全体構成は、「1.ルポ『林業最前線』」で林業への新規就労者やその仕事の紹介。「2.林業ってなんだ?」では、林業の意義や産業としての役割、作業の安全性と危険性などを解説する。また、「3.職場のしくみ」では、一般には馴染みの乏しい森林組合と林業会社の組織や就労条件などを説明している。さらに、「4.山村での暮らし」では、生活の心構えや近所づきあい、地域社会の組織、交通・不動産事情、・子どもの教育から選挙まで、体験談的に紹介している。

 最後に「5.私たちのIターン林業」では、Iターンで林業に新規就労した後、NPO法人や林業会社を設立して独立した人の事例が紹介されている。巻末には、森林・林業とその就労のための情報源が若干紹介されている。

 本当に読みやすく、具体的なイメージが湧く内容になっていて、全133頁なので3時間ほどで一気に読むことができた。難をひとつ言えば、一般の出版社の同程度の本に比べて価格が高い。

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『農で起業する!』
「農」にメーカーの企業経営手法を導入して脱サラ新規就農

 著者は、外資系の半導体メーカーに勤めていた技術畑出身の営業マンで、脱サラして専業農家に転じた。この著者の新規就農は、サラリーマン時代の仕事をすべて投げ捨ててというのではなく、企業経営のノウハウとコンピュータを活用したデータ管理などを農業に転用し、経営の最適化を追求している点が特徴である。危機管理、労働生産性の向上や経費節減による収益性の向上のための具体的な実践内容や自己研修重視の姿勢などは、十分に参考となろう。

 また、農政・農協の営農指導と一線を画し、独立独歩の経営姿勢をとる専業農家の立場から、過剰な施肥や無駄な資材の投入、補助金漬け、勘に依存した曖昧な計測、味を無視した外観の美しさの追求、有機農業・無農薬農業をめぐる誤解や問題点などを指摘し、生産者の視点で説明を加えている。

 また、宮崎県で新規就農した著者の仕事や生活、地域の人々との交流など、著者のライフスタイルも綴られていて興味深い。

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